ふぐの毒

ふぐは、関西地方では別名「てっぽう」と呼ばれております。当たれば死ぬという意味からきているようであります。

ふぐの毒は、テトロドトキシンと呼ばれる無色、無臭の神経毒であります。人間の致死量はテトロドトキシンとして0.5~1mgといわれております。症状としては、テトロドトキシンが体内に入ると、先ず唇、舌、指先等に痺れが起こり、それから知覚麻痺、運動麻痺、言語障害、呼吸困難、血圧降下などをきたしてきます。意識は死の直前まではっきりとしているようで、呼吸停止により死に至ります。

これといった治療法はありません。痺れ等に気がついたときには早急に、食べたものを吐き出させること、近くにある水等を大量に飲ませ嘔吐を繰り返し胃の中を洗い流すことが大事であります。それに呼吸を確保することが重要であります。くれぐれも砂の中に埋めてしまうというようなことはなさらないで下さい。

しかしながら、国内19都道府県では、厳しいふぐの条例によってふぐの取り扱いは厳重に管理されております。ふぐ処理師の資格をもった者しか販売加工は行えない制限がされております。ふぐを食す文化が無い地方や、一般の素人の方が調理して、毎年ふぐ中毒にかかる事件がおきております。

山口県には3000人以上のふぐ処理師が登録されており、他の都道府県よりも厳しい条例で管理されております。

本場下関のふぐを安心してご賞味いただきたいと存じます。

ふぐの白子酒

ふぐ料理を食する際に、ひれ酒を飲むことはよくご存知のことと思われます。

二月のある日、ふぐ料理をご一緒した時の話。

ふぐを食しながら、まずはひれ酒を振舞われた、香ばしい風味が料理とマッチして食欲をそそる。

次が身酒、これはふぐの刺身を四~五切れ湯飲みに入れ、煮立った日本酒に入れる。刺身は取り出してポン酢でいただく、あっさりとした味わいの珍酒であります。

その次に振舞われたのが白子酒、大変贅沢な酒であります。ふぐの白子を湯飲みに入れ、箸で塊が無くなるまでよくかき混ぜて煮立った日本酒を入れる。白っぽくなり、にごり酒かあま酒のように見える。飲んでみるとこれがまた絶品。美味しい牛乳を入れたような感じで、まさにミルキィ。ついつい飲みすぎてしまう。

この日は、大変高価な天然とらふぐを使ったコースでした。

ご馳走さまでした。

ふくの日

二月といえば、ふくが一番美味しいとされる月であります。二月だけが特別美味しいというわけではなく、白子が大きくなり食べごろとなることからそう言われるのではないでしょうか。

白子は雄の精巣であり大変美味であります。雌の卵巣は毒があって食すことはできません。昔、市場の方に聞いたのですが、人間にオカマがいるように、ふくにも何万匹に一匹くらいの割合で雄と雌の両性をもったオカマがいるそうです。白子と思って食べたら毒にあたったという話がありました。真実かどうかは分かりませんが・・・・。

二月九日は「ふくの日」であります。ふくにちなんだ行事がおおがかりに執り行われます。

ふくの美味しい時期は一番寒さの厳しい時でもあります。くれぐれもご自愛下さいませ。

すまき(簀巻き)

今回は「すまきかまぼこ」についてお話させていただきます。

すまきという意味は、身体をむしろで巻くことでありまして、昔は罰や処刑の方法とされておりました。すまきかまぼこは、魚のすり身を麦わらに巻いていて、状態がそれに似ていることから、すまきと呼ばれるようになりました。

現在では、麦わらはほとんど手に入らなくなり、また不揃いで衛生的にも好ましくなく、発砲製のストローを使用しております。造り方は、円筒状の口金から押し出したすり身を一定の長さにカットしたものを、ストローを並べた上に転がしてすり身のまわりにストローを付着させます。それを弊社は二段加熱方式で蒸し上げます。それからストローの中に溜まった水分をよく振って除去します。その後10℃以下で約1時間冷却し包装、金属探知機を通って箱詰め、出荷となります。

すまきかまぼこは、ストローを巻くために熱の伝わり方が板付きかまぼことは異なり独特の歯ごたえが堪能いただけます。

お召し上がりの前、ストローをはがし易くするために、雑巾を絞るように交互にねじっていただくことをお願いいたします。

かまぼこ板について

今回は、かまぼこ板についてお話したいと思います。

よくある質問に、「なぜ蒲鉾には板がついているの?」というのがございます。室町時代からあるといわれる蒲鉾なので本当の理由は定かではありませんが、蒲鉾を成形するときに何かにのっていなければ、成形も困難で蒸すこともできません。その当時、蒲鉾のすり身をのせることが出来たのが板しかなかったのではないかと思われます。蒲鉾だけではありませんがほとんどの食品は造ってから水分を離してゆきます。これは遊離水といいますが、好ましいものではありません。腐敗の原因にもなり風味を損ねることにもつながります。その遊離水を板が吸い取ってくれるのです。もともと木も水分を吸ったり離したりする性質がありますので大変都合がいいものであります。最初に蒲鉾を造った方がそれを知っていたかは分かりませんが・・・・

蒲鉾板を造る原料についてですが、昔から杉かモミ系の原木が多く使われております。それぞれ長所短所はあります。杉の場合、香りはいいのですが使用する部分によっては少し色がついております。特に木の中心部は濃い色なので使用できません。蒲鉾に色が移ってしまいます。柱などの建築材をとった後の外側部分を使用するのがいいとされております。モミ系については、色白でいいのですが木の種類や育った場所、使用する部分によっては異臭がすることがあります。お客様からのクレームで消毒臭いとか薬臭いと言われることがありますが、ほとんどはこれが原因であります。

それに蒲鉾板は大変な精度によって製造されております。包装機等の機械のセッティングをミリ単位で行うため板のサイズが少しでも違えば機械にかみこんでしまいトラブルの原因となってしまいます。また板の表面が少しでもザラついているとすり身との間に空気が入り、蒸したときに気泡が発生してしまいますので、高級家具並みに仕上げるカンナがかかっております。

家庭菜園

私事で恐縮ですが、我が家では家庭菜園のまねごとをしておりまして、数種類の野菜を育てております。きっかけは、「ふく」や「さば」の刺身をいただく時の薬味であります小ねぎにこだわりを持ったことからでございます。小ねぎは「ふく」や「さば」の刺身には欠かせない存在であります。いただく直前に小ねぎを収穫し、さっと細かく切って薬味としていただく。最高です。ここらあたりで栽培されている小ねぎは「安岡ねぎ」と言って、関東関西の高級料亭でも使用されているブランド品であります。

「ふく」の食べ方は好みがありますが、捌いて時間をおかずに食べると歯ごたえを楽しめますし、時間を置けばアミノ酸が増え旨味を味わえます。「さば」はできるだけ新しいものをお勧めします。我が家では、一匹買って半身をその日のうちに刺身でいただき、あくる日に半身を皮一枚酢で絞めていただきます。「ふく」も「さば」もいい小ねぎがあると最高です。

魚は鮮度が大事ですが、野菜も同様です。収穫したてのものは格別です。皆様方の中にも、家庭菜園をされている方もいらっしゃると思いますが、されたことがない方は一度挑戦されてはいかがでしょうか?広い場所が必要ではありません。プランターでも十分可能です。是非どうぞ。